木登りの名人の話（徒然草 第百九段）
昔木登りの名人が、弟子に木を登らせている時危険な高いところでは黙って見つめ、弟子が仕事を終えてあと少しで地面というところで「気をつけなさいと」声をかけました。
見学していた人は、なぜ高いところではなく、落ちても飛び降りても平気そうな低いところで声をかけるのかと疑問を口にしました。
さて、名人は何と答えたでしょうか？
普通は危険な高いところこそ注意すべきと思います。
しかし、名人は経験から知っていたのです。
誰しも危険とわかるところでは、教えなくとも注意をする。しかし、あと少しで地面だと気を抜いた時こそ、一番事故が起こりやすい。
なので、名人は気が緩みやすいタイミングで弟子に声をかけたという訳です。
油断大敵とはよく言いますが、人間の心理が描かれたストーリだと思います。